2015年8月11日火曜日

マウス精嚢タンパク質SVS2の雌性生殖器内での働き

河野菜摘子、宮戸健二国立成育医療研究センター生殖・細胞医療研究部)
荒木直也、吉田 学(東京大学大学院 理学系研究科)
吉田 薫(桐蔭横浜大学 先端医用工学センター)
 

 哺乳類精子は、メスの腟・子宮を通過した後、卵管内の卵へたどり着き受精を成立させる。古くから、卵管まで進入した精子の受精能は高いこと、精漿には精子 の受精能を抑制する働きがあることは知られていたが、実際のメス生殖器内での精子の状態は不明であった。本研究では、精嚢から分泌される精漿タンパク質Seminal vesicle secretion 2SVS2)の機能に注目することで、体内受精の仕組みを明らかにすることを目的とした。
 SVS2を欠損したオスマウスは、野生型のオスと同様に高い受精能を有した精子を形成していたが、自然交配では産仔がほとんど得られなかった。その原因の一つとして、腟栓の形成不全が考えられたが、腟栓の代替物としてシリコンを用いて人工授精を行ったところ、SVS2非存在下では依然として低い受精率を示した。SVS2存在下での人工授精では精子は高い受精能を示したことから、SVS2は体内受精に必須な因子であると言える。
さらに解析を行った結果、SVS2非存在下では子宮内精子は細胞膜が破壊され死滅していることが明らかとなった。また発情したメスから子宮内液を回収し、体外で精子に添加したところ、有意に精子の生存性が低下し、精子が凝集する様子が観察された。またこの現象は子宮内液を5630分処理することで見られなくなったことから、子宮内には精子を死滅させる液性因子が存在すること、またそこには補体が関係していると考えられた。
 以上の結果から、哺乳類において、メス生殖器内には精子をも殺す免疫システムが存在すること、またメスによる精子への攻撃をオスは精漿タンパクを用いて防いでいると考えられた。

(参考文献)
Kawano N. et al., (2014) Seminal vesicle protein SVS2 is required for sperm survival in the uterus. PNAS. 111(11), 4145-4150.