2015年8月11日火曜日

DNA断片化陰性運動精子の選別と人工卵管用いる高精度媒精

 我々は現行のART治療モデル(卵が採れたから夫に射精を依頼する、卵が先)に代えて、予め精子数の確保と質の保証ができたから採卵を提案する(治療アルゴリズムを逆転し、精子が先)という新しいモデルを提唱したい。
具体的には、1.ARTに供する精子の高精度分画法を確立(原理が異なる複数の遠心分離法を組み合わせて、選択的かつ高収率なDNA断片化陰性運動精子の無菌調製法を確立した)、2.精密検査による分画精子の品質管理(DNA断片化、頭部空胞、先体局在、Caチャネル開口能、ミトコンドリア酸化還元等)、3.高効率な精子凍結保存法の確立(排卵と射精の時間的同調が不要となり、凍結蓄積による精子の数的確保と多項目の精密検査を行う時間確保)、4.in vitro精子薬物療法による有効精子数の増加(Caチャネル開口薬剤による先体反応誘起障害のin vitro治療により、受精に寄与する運動精子比率を改善する)、5.人工卵管(媒精環境の微小化と卵管形状を模した細流路内で運動精子の分離、先体反応誘起、媒精を同時に行い、必要精子量の減少を図る)を統合的に運用する高精度媒精システムを構築する。
 卵側に問題がないと仮定すると、一般則として常に精子の状態が良好な場合は、避妊していないと妊娠する。常に不良な場合はICSIを施行するが、本法はあくまで精子の量的不足を補う手技であり、質的異常を補償することはできない。高精度な精子分画および品質管理技術の確立、運用が実現していない現状では、ICSIはむしろ重度精液所見不良例には不向きな治療である。精子側技術が最も介入しやすいのは、射精毎に所見の変動幅が大きい場合である。実際、精液検査時と採卵時の所見が大きく異なる例をしばしば経験する。精子凍結保存による採卵と射精の時間的制約解除は、患者夫婦が準備状況(精子高精度分画、精密検査による量の確保と質の把握)を基にどのような授精法が使用可能か、さらに妊娠の可能性等について説明を受け、自らinformed choiceすることを可能にする。